写真はイメージです(Photo: Ben Griffiths / Unsplash)
特別な訓練を受けていない家庭の犬が、知らない人の「てんかん発作」のときのにおいに気づいているかもしれない――。イタリアのミラノ大学の研究チームが、30匹の犬を使った実験の結果を発表しました。まだ小さな実験ですが、犬の鼻の力をあらためて感じさせる研究です。
ミラノ大学が30匹の犬で実験
研究をしたのは、ミラノ大学獣医学部(イタリア北部のローディにある研究室)のフェデリカ・ピッローネさんたちのチームです。結果はイタリア国立衛生研究所の学術誌に2026年にのり、10月31日には科学ニュースサイト「サイエンスアラート」が紹介しました。
実験には、飼い主と暮らす34匹の犬が参加し、においの場所にまったく近づかなかった4匹をのぞく30匹のデータが調べられました。犬の年齢は1〜14歳で、ミックス犬のほか、ラブラドール・レトリーバーやボーダー・コリー、ダックスフンド、チワワなど14の犬種がいました。どの犬も、病気のにおいをかぎ分ける訓練を受けたことはなく、てんかんのある人と暮らしたこともありませんでした。
3つのにおいから、どれを先にかぐ?
てんかんは、脳の中の電気の信号が一時的に乱れて、発作が起きることがある病気です。チームは、てんかんのあるひとりの女性にきょうりょくしてもらい、汗のにおいを集めました。用意したのは、①発作が起きているときの汗、②発作のないときの汗、③何もついていないガーゼの3種類です。
においは、スタート地点から約3mはなれた3か所に置かれ、犬は飼い主といっしょにスタートして、2分間自由にかぎまわりました。どこにどのにおいがあるかは、飼い主にも、はなれた場所からカメラで様子を見ていた研究者にも知らされていませんでした。思いこみで犬を誘ってしまわないようにするための工夫です。
14匹が「発作のにおい」へまっさきに
結果、30匹のうち14匹が、最初に発作のときの汗のにおいへ向かいました。これは、たまたまえらんだと考えるよりも多い数でした。ただし、においをかいでいた時間や、何回もどってきたかには、においによるちがいは見られませんでした。どの犬にも、こわがったり、いやがったりする様子はなかったそうです。
注意したいのは、においをもらったのがひとりだけという点です。発作のときのにおいが、だれにでも共通するものかどうかはまだわかりません。チームは、もっと多くの人のにおいを使って調べる準備を進めています。
犬の鼻はどれくらいすごい?
犬の鼻には、においを感じるセンサー(受容体)が1億2500万〜3億ほどあるとされ、人のおよそ40倍といわれます。脳の中でも、においを感じる部分が大きく発達しています。この力をいかして、空港で荷物を調べる犬や、人をさがす救助犬が活やくしています。
海外には、てんかんのある人のそばにいて、発作が起きたときに助けをよんだり、体を支えたりする訓練を受けた犬もいます。ただ、犬が発作を前もって知らせることができるかどうかについては、専門家の間でも意見が分かれています。今回の研究は、そのなぞを解く手がかりの一つになるかもしれません。
日本の読者に知ってほしいこと
日本では、盲導犬・介助犬・聴導犬が「身体障害者補助犬」として法律で決められていて、お店や電車などにいっしょに入ることができます。研究が進めば、犬が人の体調の変化に気づく力が、これからもっと役立つ場面がふえるかもしれません。
一方で、家の犬がいつもとちがう行動をしても、それだけで人の病気を判断することはできません。人の体調は医師に、犬の様子で気になることはかかりつけの獣医師に相談しましょう。
ここがポイント
- ミラノ大学のチームが、訓練を受けていない家庭の犬30匹で実験した
- 14匹が、3つのうち発作のときの汗のにおいへ最初に向かった
- においをもらったのはひとりだけで、もっと多くの人で確かめる必要がある
- 犬の鼻のセンサーは人のおよそ40倍あるといわれる
出典: Pirrone F. ほか「Spontaneous orienting of untrained companion dogs naïve to human epilepsy toward odor samples from an unfamiliar human…」Annali dell’Istituto Superiore di Sanità 62巻2号(2026年)、ScienceAlert「Dogs may smell a complete stranger’s seizure without ever being trained」(2026年10月31日)、Wikipedia「Dog anatomy」、Wikipedia「Seizure response dog」
