写真はイメージです(Photo: Christopher Farrugia / Unsplash)
地中海で、アカウミガメが卵を産む場所を西へ広げています。もともとはギリシャやトルコなど東側の浜が中心でしたが、今はイタリアやフランス、スペインの海水浴場でも産卵が増えています。環境ニュースサイト「モンガベイ」が11月6日、人とウミガメが砂浜を分け合おうとする取り組みを伝えました。
東から西へ広がる産卵地
地中海のアカウミガメは、これまでギリシャ、トルコ、キプロスなど東部や中部の浜でおもに卵を産んできました。ところが2000年代に入ると、イタリア南部のカラブリア州で産卵のあとが見つかるようになりました。スペインでは2001年に初めて巣が確認され、2014年からは毎年産卵が見られるようになっています。
スペイン・バルセロナ大学の研究チームが遺伝子を調べたところ、西で卵を産むカメは、ギリシャやトルコ、さらに大西洋のカリブ海の集団とつながっていることがわかりました。遠くから新しい浜へやってきた「開拓者」たちなのです。
なぜ西へ? あたたかくなる海
研究者が考えている理由の一つは、海の温度です。地中海の西側にあるえさ場の海があたたかくなり、子ガメが早く育って、生まれた浜から何千kmも離れた場所でおとなになってしまう、という考え方です。スペインの浜も、今では卵がかえるのに十分なあたたかさになっています。
ウミガメのお母さんは、同じ浜にくり返しもどってくる性質があります。新しい浜で生まれた子ガメが大きくなって帰ってくれば、新しい産卵地として定着すると研究者は期待しています。ただし、イタリアの研究機関アントン・ドールン臨海実験所の研究者は、はっきりした原因はまだわかっていないとも話しています。
海水浴場の「明かり」が課題に
西の新しい産卵地は、多くが夏ににぎわう海水浴場です。イタリアには「リド」とよばれる有料のビーチ施設が約2万7,000か所あり、砂浜の約43%をしめています。夜明け前にトラクターで砂をならすと、砂がかたくなったり、浅い場所にある卵がこわれたりするおそれがあります。
とくに問題なのが明かりです。生まれたばかりの子ガメは、浜辺の明かりにまどわされると、海とちがう方向へ進んでしまうことがあります。イタリア南部のカンパニア州では、2022年と2023年に調べた巣の87%が浜辺の明かりにさらされ、82%で子ガメが迷わないよう人の手助けが必要でした。
ウミガメと砂浜を分け合う町
かつては、巣があると商売のじゃまになると心配するビーチもありました。しかし今は考え方が変わってきています。カンパニア州のアシェアという町では、研究所と協力して海岸ぞいにウミガメにやさしい弱い明かりを取り付けました。2027年からは、この地域で浜辺の施設を開くとき、光をおさえた照明が必要になります。ドローンで巣をさがしたり、子ガメが海へ向かう道をつくったりするボランティアも活動しています。ビーチのオーナーは、お客さんが産卵やふ化を見られることを喜んでいると話しています。
日本はアカウミガメの大切な産卵地
アカウミガメは、日本にとっても身近なカメです。北太平洋のアカウミガメはおもに日本の砂浜で卵を産み、屋久島や静岡県の遠州灘、和歌山県南部、宮崎県の日南海岸などが知られています。産卵は5〜8月ごろで、1回に70〜150個ほどの卵を産みます。おとなは体重が最大約200kgにもなりますが、生まれたばかりの子ガメは約20gしかありません。日本の環境省のレッドリストでは絶滅危惧種とされています。夏の夜に浜辺へ行くときは、ライトで砂浜を照らさない、見つけてもさわらないなど、地元のルールを守って見守りましょう。
ここがポイント
- 地中海のアカウミガメは、東の浜からイタリアやスペインなど西へ産卵地を広げている
- 海があたたかくなり、子ガメが早く育つことが理由の一つと考えられている
- 海水浴場の明かりが課題で、弱い照明に変える町も出てきた
- 日本は北太平洋のアカウミガメのおもな産卵地。浜辺では明かりに気をつけて
出典: Mongabay(2026年11月6日)、ウィキペディア「アカウミガメ」
