カナダの海で、だれも知らなかったタイセイヨウセミクジラの赤ちゃんが見つかりました。アメリカのニューイングランド水族館が11月2日に発表したもので、この冬に生まれた赤ちゃんは全部で24頭になりました。世界に約380頭しかいない、とても数の少ないクジラにとって、うれしいニュースです。
9月にカナダの島の近くで撮影
赤ちゃんが写真にうつったのは、2026年9月25日のことです。場所はカナダ・ケベック州のアンティコスティ島の近くで、クジラを調べている地元の団体「ミンガン島クジラ類研究所」の研究者が撮影しました。
写真は、ボストンにあるニューイングランド水族館の研究センターに送られました。ここには、タイセイヨウセミクジラ1頭1頭の写真をまとめた「名簿」があります。研究者は何週間もかけて、これまでの記録と写真を見くらべました。その結果、まだ記録されていない新しい赤ちゃんで、2025年から2026年にかけての冬に生まれた可能性が高いとわかりました。
お母さんは38歳の「シルト」
赤ちゃんといっしょにいたのは、「シルト」とよばれるメスです。少なくとも38歳で、これまでに6頭の子どもが確認されています。孫が3頭、さらに今年はひ孫も生まれた、大家族のおばあちゃんでもあります。
シルトは2026年2月、アメリカ南東部の出産の海でちらっと見られたあと、9月まで姿が確認されていませんでした。水族館の研究者エイミー・ウォーレンさんは、シルトがそこで子どもを産み、親子がいっしょにいるところを記録される前に北へ移動したのではないかと考えています。冬の調査では見つからず、半年以上たってから遠いカナダの海で見つかったというのは、海の広さを感じさせる発見です。ウォーレンさんは「この時期にわくわくする発見」と喜んでいます。
この冬の赤ちゃんは24頭に
タイセイヨウセミクジラは、冬にアメリカ南東部のあたたかい海で赤ちゃんを産み、そのあと北のアメリカ北東部やカナダの海へ移動してえさを食べます。出産の季節は11月中ごろから4月中ごろまでです。この季節には23組の親子が確認されていて、記録が残る中で4番目の多さでした。今回の赤ちゃんで、合計は24頭になりました。
このクジラは、漁で使うロープやあみにからまったり、大きな船とぶつかったりする事故が大きな問題になっています。赤ちゃんを産める年ごろのメスは70頭ほどしかいないため、1頭の赤ちゃんの誕生が、ほかの動物よりずっと大きな意味をもちます。
頭の「白いもよう」で1頭ずつ見分ける
アメリカ海洋大気庁によると、タイセイヨウセミクジラはおとなで体長が最大約16m、体重は最大約6万3,000kgにもなります。生まれたばかりの赤ちゃんでも約4mあります。長いものでは70歳ほどまで生きるといわれます。口の中の「ひげ板」というくしのようなもので、カイアシ類などの小さなプランクトンをこしとって食べます。
頭には、ごつごつした白いもよう(カロシティ)があります。白く見えるのは、皮ふに小さな生き物がたくさんついているためで、もようの形は1頭ずつちがいます。研究者はこれを人の顔のように使って、どのクジラかを見分けています。
日本の近くにもいる「セミクジラ」
日本のまわりの海には、近い仲間の「セミクジラ」(北太平洋セミクジラ)がすんでいます。こちらもとても数が少なく、知床半島や伊豆諸島、小笠原諸島などで、ごくまれに見られる程度です。2020年12月には千葉県の銚子沖で親子が確認されました。もしホエールウォッチングなどで出会えたら、とても貴重な体験です。
ここがポイント
- 9月25日、カナダのアンティコスティ島近くで、記録のなかった赤ちゃんが撮影された
- お母さんは38歳以上の「シルト」。この冬の赤ちゃんは合計24頭になった
- 世界に約380頭、出産できるメスは約70頭と少なく、1頭の誕生がとても大切
- 日本近海には仲間のセミクジラがいて、ごくまれに見られる
出典: ニューイングランド水族館(2026年11月2日)、アメリカ海洋大気庁(NOAA Fisheries)、ウィキペディア「セミクジラ」