写真はイメージです(Photo: Wolfgang Hasselmann / Unsplash)
オーストラリア南部で90年前に1匹だけ見つかり、名前もないまま博物館にしまわれていたヤスデが、新しい種としてようやく名前をもらいました。もとの場所から離れた島で生きた姿が確認され、2026年10月23日に学術雑誌「ズーキーズ」で発表されました。
1936年の標本から始まった物語
新しい種の名前は「コロボトリクス・デッケリ」です。最初の1匹は1936年、南オーストラリア州のヨーク半島の南部でとられ、南オーストラリア博物館に「名前のわからないヤスデ」として保管されていました。
この標本に光が当たったのは2015年です。ドイツの研究者ペーター・デッカーさんが、ヤスデの研究のために博物館から標本を借りたとき、その中にまぎれていたのです。種の名前「デッケリ」は、このデッカーさんにちなんでいます。
見つからなかった2回、見つかった3回目
名前をつけるには、もっとくわしく調べられる新しい標本が必要です。オーストラリア・タスマニア州に住むヤスデ研究者のロバート・メシボフさんは、2016年と2017年に、1936年と同じヨーク半島の場所をさがしましたが、1匹も見つかりませんでした。
ところが2026年、メシボフさんは西オーストラリア博物館の記録をインターネットで調べていて、同じ種らしいヤスデを見つけます。じつは2010年、クモの研究者たちがカンガルー島の北西部で落ち葉の中の小さな生き物を調べたとき、このヤスデも何匹かとっていたのです。2021年には別の研究者が、数km離れた場所でも見つけていました。メシボフさん自身も2026年にカンガルー島で数匹を集め、くわしく調べて新しい種として発表しました。本人は「3度目の正直!」と喜びを表しています。
名前は「短い毛」という意味
このヤスデは、新しい「属」(種より一つ大きなグループ)にも分けられました。属の名前「コロボトリクス」は「短い毛」という意味です。おとなのオスのあしには、小さなボールのような形の毛のかたまりがあり、その先の毛がとても短くて丸いことから名づけられました。
カンガルー島は、1936年の場所から南へ約50km、海をこえたところにあります。島の北西部は比かく的しめった土地です。一方、ヨーク半島の発見場所は石灰岩の土地で、今はもっとかわいています。メシボフさんは、昔もっと雨が多かった時代の生き残りが、石灰岩のすき間で今もくらしているかもしれないと考えています。
豆知識:カンガルー島とヤスデ
カンガルー島は面積が約4,405平方kmで、東京都のおよそ2倍の大きさです。オーストラリアで3番目に大きな島で、カンガルーやワラビー、アシカ、小さなペンギンなどがすんでいます。2019年から2020年にかけての大きな山火事では、島の約半分が焼けました。
ヤスデは、体の多くの節に2対(4本)ずつあしがある生き物で、ムカデとは別のなかまです。おもに落ち葉やくさった植物を食べ、森の落ち葉を土にかえる大切な役目をしています。かみつくことはなく、おそわれると体を丸めたり、くさいにおいの液を出したりして身を守ります。
日本にもいるヤスデのなかま
日本でも、落ち葉をめくるとヤスデが見つかります。デッカーさんが研究していたのは「ヤケヤスデ科」というグループで、日本にもヤケヤスデのなかまがいます。キシャヤスデは山の森で何年かおきに大発生することで知られ、1976年には線路をうめつくして列車が止まったという記録もあります。日本最大のヤエヤママルヤスデは約7cmになります。さわっても害がない種がほとんどですが、においの液がつくことがあるので、観察したあとは手をあらいましょう。
ここがポイント
- 1936年に1匹だけとられたヤスデが、90年後に新しい種として名前をもらった
- もとの場所では見つからず、約50km離れたカンガルー島で生きた姿が確認された
- 博物館の古い標本やネットで公開された記録が、発見の手がかりになった
- ヤスデは落ち葉を土にかえる森のそうじ屋さん。日本でも身近に見られる
出典: Pensoft Blog(2026年10月27日)、ZooKeys(Mesibov, 2026)(2026年10月23日)、Wikipedia「Kangaroo Island」、ウィキペディア「ヤスデ」
