写真はイメージです(Photo: Andreas Vonlanthen / Unsplash)
南アフリカのウィッツ大学などの研究チームが、アフリカ南西部の国ナミビアでくらす野生のライオンのおなかの中にいる細菌やウイルスを調べました。318種類の細菌と102種類のウイルスの遺伝情報を組み立てたところ、その多くがまだ知られていない新しい種類とみられることが分かりました。
野生のライオン20頭のふんを調べた
研究の結果は2026年10月13日に大学から発表され、科学の専門誌「アニマル・マイクロバイオーム」に論文がのりました。調べたのは、ナミビア北部のエトーシャ国立公園にすむ野生のライオン20頭です。集めたふんは、全部で23個でした。
ふんには、腸(食べ物を消化して栄養を取りこむ、おなかの中の長い管)にすんでいる細菌やウイルスの遺伝子がふくまれています。腸の中にいる小さな生き物の集まりは「腸内細菌」などとよばれ、食べ物の消化や体のはたらきを助けています。
ふんを集めたのは、ウィッツ大学の大学院生で、論文をいちばん中心になって書いたカール・ベルジャーさんです。このとき、ライオンは別の生態調査のために、獣医師が薬で一時的にねむらせていました。同じ機会に、ほかのチームは血液や毛を取ったり、居場所を知らせる首輪をつけたりしました。ライオンへの負担を少なくするため、一度の機会をいくつもの研究で分け合ったのです。
コンピューターでパズルのように組み立てる
ふんから取り出したDNAは、こまかいかけらの状態になっています。研究チームはこれを読み取り、コンピューターでパズルのようにつなぎ合わせて、一つひとつの細菌やウイルスの遺伝情報を組み立てました。計算にはコンピューターを数万時間分も動かす必要があり、データの量は数十テラバイトにもなりました。
組み立てた遺伝情報を、世界のデータベース(これまでに分かった生き物の遺伝情報を集めた図書館のようなもの)とくらべると、多くは登録されているものと大きくちがっていました。そのため、新しい種類である可能性が高いと考えられています。さらに、ライオンから得た遺伝情報をデータベースに加えると、正体の分からないDNAの割合は24.5%から4.5%まで減りました。
肉を食べるくらしを支える細菌も
見つかった細菌の中には、プリン体という物質を分解するはたらきにかかわるものがありました。プリン体は肉などに多くふくまれる物質です。研究では、プリン体のなかまを最後は尿素という物質にまで分解する道すじが、ほぼそろっていることも分かりました。肉を主に食べるライオンの体の中で、細菌が大切な役割を受け持っている可能性があります。
ベルジャーさんは、ライオンだけでなく体の中の小さな生き物も含めて考えることが大事だと話し、「すべてがつながっている」と述べています。
豆知識:ライオンってどんな動物?
アメリカのスミソニアン国立動物園によると、ライオンのオスの体重は150〜250kgほどで、体の長さは最大で約3m、それに60〜90cmほどのしっぽがつきます。メスは体の長さが最大で約2.7mです。「プライド」とよばれる群れでくらし、群れの大きさは数頭から40頭ほどまでさまざまです。シマウマやヌーなど、45〜450kgほどの大きな動物を主に食べます。
野生での寿命は、メスで最大16年ほど、オスは12年をこえることはめったにありません。野生のライオンはおよそ2万頭とされ、この10年ほどで約30%減ったといわれています。今はほとんどがアフリカにすみ、インド北西部のギルの森にも少しだけ残っています。
調査が行われたエトーシャ国立公園は1958年にできた国立公園で、広さは約2万2270平方kmあります。これは日本の四国よりも広い面積です。
これからの研究と日本とのつながり
今回の研究で、健康な野生のライオンのおなかの中が、どんな様子なのかを知る手がかりができました。動物園などで人に育てられている動物は、ほかの種類の動物で腸内細菌の種類が少なくなる例が知られています(いつもそうなるわけではありません)。野生のデータがあれば、そうした動物とくらべることができ、数が減っているライオンの健康を見守る研究に役立つと期待されています。
一方で、今回調べたライオンの数は多くないため、群れごと、オスとメス、年れいによるちがいはまだ分かっていません。研究チームは今後、季節による変化や、おなかに子どもがいるとき、まわりの環境から受けるストレスによるちがいなども調べられるとしています。
日本でもライオンは多くの動物園で見ることができます。動物園でライオンを見るときは、目に見えないおなかの中の小さな生き物たちのことも、少し思いうかべてみてはいかがでしょうか。
ここがポイント
- ナミビアのエトーシャ国立公園で、野生のライオン20頭のふん23個を調べた
- 318種類の細菌と102種類のウイルスの遺伝情報を組み立て、多くが新種とみられる
- 肉に多いプリン体を分解する細菌のはたらきも見つかった
- 健康な野生のライオンの「おなかの基準」として、今後の見守りに役立つと期待される
出典: Wits University「Inside a lion’s gut」(2026年10月13日)、Good Things Guy(2026年10月20日)、Smithsonian’s National Zoo「African lion」(2026年10月21日閲覧)、コトバンク「エトシャ国立公園」(2026年10月21日閲覧)
