写真はイメージです(Photo: Antelope Park / Unsplash)
大きなゾウが命を終えたあと、その場所の土や草が何年も変わり続けることが、南アフリカの国立公園での研究で分かりました。栄養がたっぷりの「特別な場所」が生まれ、少なくとも8年間は影響が残っていたといいます。
南アフリカの国立公園で約15年の研究
この研究は、アメリカのカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)や南アフリカ環境観測ネットワーク(SAEON)、南アフリカ国立公園局などのチームが行い、アメリカの科学雑誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表しました。UCSBは2026年10月12日に、この結果を紹介しています。
調査した場所は、南アフリカにあるクルーガー国立公園です。たくさんの野生動物がくらす、アフリカを代表する自然公園の一つです。チームは、ゾウがなくなった場所の土の成分や、土の中の目に見えない小さな生き物(微生物)、生えている植物の種類、草を食べに来る動物のようすを調べました。研究は約15年にわたり、アメリカ国立科学財団の支援を受けています。
きっかけは1頭のオスのゾウ
研究のきっかけは2009年です。クルーガー国立公園で、大きなきばを持つオスのゾウ「アレクサンダー」が、自然に寿命を終えました。アレクサンダーが横たわっていたのは、研究者のデイブ・トンプソンさんがよく通る道のすぐそばでした。
トンプソンさんは、それから数か月、その場所が少しずつ変わっていくようすを見守りました。この経験から、UCSBのデロン・バークパイル教授といっしょに研究を始めました。その後は、公園のレンジャー(自然を守る仕事をする人)の協力も得て、調べる場所を探していきました。
土の栄養が最大3000倍に
大きなゾウの体重は約4トン(4000キログラム)にもなります。体は数週間ほどで自然に分解され、土に返っていきます。すると、その場所の土に栄養がいっきに入ります。
調査では、新しい場所ほど土の中の窒素(植物が育つのに必要な栄養の一つ)が多く、ふつうの土の最大3000倍にもなることがありました。ところが、栄養が多すぎると、はじめは植物にとって毒のようにはたらき、草が生えてこられません。
土の微生物は活発になる一方で、種類は少なくなりました。植物も、成長の早い一部の種類だけが広がり、少なくとも8年間は種類の少ない状態が続いていました。
栄養たっぷりの草に動物が集まる
いっぽうで、その場所に生えた草は栄養がとても豊かになります。研究者は、水っぽいレタスが、栄養のあるおいしいレタスに変わるようなものだとたとえています。
このため、草を食べる動物たちが何年もくり返しやって来ます。動物が落としたふんが、さらに土を豊かにします。調べた中でいちばん古い、約8年たった場所でも、草の栄養や、動物が食べに来るようすは弱まっていませんでした。
海では、クジラが命を終えて海の底にしずむと、何十年も多くの生き物を支えることが知られていて、1970年代の終わりから研究されてきました。いっぽう、陸の大きな動物についての研究は、ここ5年ほどで増えてきたばかりです。
豆知識:アフリカゾウってどんな動物?
アフリカゾウは、陸にすむ動物の中でいちばん大きな動物です。体重は5〜7.5トン、肩までの高さは3〜4メートルほどになります。寿命は50〜70年で、1日に200〜300キログラムもの草や木の葉などを食べます。
ふだんは年上のメスが率いる10〜20頭ほどの群れでくらし、大人のオスは1頭か少ない数でくらすことが多いです。アフリカのサハラ砂漠より南の草原や森にすんでいますが、すみかが減ったことなどで数が少なくなり、絶滅のおそれがある動物とされています。日本でも、いくつかの動物園で見ることができます。
これからの研究
バークパイル教授は、サバンナ(木がまばらに生える草原)は、こうした影響が強く出る「ちょうどいい環境」かもしれないと考えています。森や湿地では雨で栄養が流れてしまい、砂漠では水が足りなくて栄養を生かしきれないからです。
チームは、動物が入れないようにさくで囲んだ場所をつくり、草がどのくらいの早さで元にもどるかを調べていて、来年には結果が出る見込みです。アフリカのほかの地域の研究者とも協力し、大雨や日照りなど、天気の変化が栄養の動きにどう関係するかも調べていく予定です。ゾウのくらす自然を守ることは、草原の生き物たちのつながりを守ることにもつながりそうです。
ここがポイント
- 南アフリカのクルーガー国立公園で、ゾウがなくなった場所を約15年調べた
- 土の窒素は最大でふつうの3000倍になり、はじめは草が生えにくくなる
- 植物の種類が少ない状態は少なくとも8年続く一方、栄養たっぷりの草に動物が集まる
- アフリカゾウは体重5〜7.5トン、1日に200〜300キログラムの植物を食べる
出典: UC Santa Barbara「Elephants continue to shape the savanna even after death」(2026年10月12日)、edhat「Groundbreaking UCSB Study Finds Elephant Remains Transform Savanna Soil and Wildlife Grazing for Years」(2026年10月17日)、コトバンク「アフリカゾウ」(世界大百科事典、小学館の図鑑NEOほか)(2026年10月22日閲覧)
