大型犬はなぜ早く年をとる? DNAの「とびはねる遺伝子」に手がかり

暗い背景にたたずむ黒いグレート・デーン(イメージ)

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写真はイメージです(Photo: Ingo W. Dühring / Unsplash)

小ちいさな犬いぬにくらべて、大おおきな犬いぬは寿命じゅみょうが短みじかいことが知しられています。アメリカのアリゾナ州立大学しゅうりつだいがくなどの研究けんきゅうチームが、その理由りゆうの一ひとつにつながるかもしれない「DNAの変化へんか」を見みつけ、2026年ねん10月がつ8日にちに科学雑誌かがくざっし「サイエンス」で発表はっぴょうしました。カギをにぎるのは、「とびはねる遺伝子いでんし」とよばれるDNAの部分ぶぶんです。

約やく900頭とうの飼かい犬いぬのDNAを調しらべた

研究けんきゅうを進すすめたのは、アリゾナ州立大学しゅうりつだいがく(ASU)のノア・スナイダー・マックラー教授きょうじゅや、ブリアナ・マッコイさんたちのチームです。チームは、アメリカで飼かわれている894頭とうの犬いぬからDNAを集あつめて、くわしく調しらべました。犬いぬの種類しゅるい(犬種けんしゅ)や体からだの大おおきさは、小型こがた犬けんから超大型ちょうおおがた犬けんまでさまざまです。

調しらべたのは「メチル化か」とよばれる、DNAにつく小ちいさな目めじるしです。メチル化かは、遺伝子いでんしのはたらきのスイッチを入いれたり切きったりする役目やくめをもっていて、年としをとるにつれて少すこしずつ変かわることが知しられています。チームは300万まんか所しょをこえる目めじるしを調しらべ、その様子ようすから犬いぬの年ねんれいを当あてる「分子ぶんし時計とけい」もつくりました。この時計とけいは、ずれが1年ねん未満みまんで年ねんれいを当あてられたそうです。

大おおきな犬いぬほど「目めじるし」が早はやくへる

調しらべた結果けっか、犬いぬは年としをとるにつれて、DNAの目めじるしが広ひろい範囲はんいでへっていくことが分わかりました。とくに目立めだったのが「トランスポゾン」、別名べつめい「とびはねる遺伝子いでんし」とよばれる部分ぶぶんです。これは、DNAの中なかで自分じぶんをコピーして、ほかの場所ばしょに入いりこむことがある部分ぶぶんです。ふだんはメチル化かの目めじるしによって、勝手かってに動うごかないようにおさえられています。

中なかでも「LINE1(ラインワン)」というタイプでは、年ねんれいとともに目めじるしがへる場所ばしょが40%をこえ、ほかのタイプより多おおくなっていました。さらに、超大型ちょうおおがたの犬種けんしゅは小型こがたの犬種けんしゅにくらべて、LINE1の目めじるしが1年ねんあたり約やく35%多おおくへっていたのです。研究けんきゅうチームは、大おおきな犬いぬでは「とびはねる遺伝子いでんし」へのブレーキが早はやくゆるむことが、年としをとるスピードの速はやさの一部いちぶにつながっているのではないかと考かんがえています。

オスとメスのちがいも見みつかった

チームが「予想外よそうがい」とした結果けっかもあります。オスの犬いぬは、メスよりも年としをとることにかかわる変化へんかが早はやくたまる傾向けいこうがありました。チームは、メスがもつ2本ほんのX染色体せんしょくたい(体からだの設計図せっけいずである遺伝子いでんしが入はいった入いれもの)が、こうした変化へんかから体からだを守まもっているのかもしれないと考かんがえています。

また、DNAから分わかる「体からだの年ねんれい」が、実際じっさいの年ねんれいより進すすんでいる犬いぬは、早はやく命いのちを終おえる危険きけんが高たかいことも分わかりました。

豆知識まめちしき:犬いぬの大おおきさと寿命じゅみょう

犬いぬは同おなじ「犬いぬ」という一ひとつの種しゅでも、体からだの大おおきさのちがいがとても大おおきい動物どうぶつです。大型犬おおがたけんのグレート・デーンは10歳さいまで生いきれば長生ながいきといわれる一方いっぽう、小型こがた犬けんのチワワは20歳さい近ちかくまで生いきることもあります。

今回こんかいの研究けんきゅうに使つかわれたのは、「ドッグ・エイジング・プロジェクト」という研究けんきゅうのデータです。2014年ねんに始はじまり、アメリカのワシントン大学だいがくが中心ちゅうしんになって進すすめています。飼かい主ぬしが犬いぬを登録とうろくしてアンケートに答こたえ、一部いちぶの犬いぬは血液けつえきなどのサンプルも提供ていきょうして、一生いっしょうを通つうじて健康けんこうの様子ようすを記録きろくします。これまでに約やく5万まん5000頭とうの犬いぬが参加さんかしています。

これからの課題かだいと期待きたい

ただし、今回こんかい分わかったのは「目めじるしがへること」と「年としのとり方かた」が結むすびついている、ということです。目めじるしがへることが年としをとる原因げんいんなのか、それとも年としをとった結果けっかなのかは、まだ分わかっていません。研究けんきゅうに参加さんかしていない専門家せんもんかも、こうした変化へんかは顔かおの「しわ」のような年としをとったしるしで、原因げんいんとはかぎらないと話はなしています。また大型犬おおがたけんには、犬種けんしゅごとにかかりやすい病気びょうきもあります。

それでも研究けんきゅうチームは、とびはねる遺伝子いでんしが、犬いぬだけでなく人ひとをふくむほ乳にゅう類るいの老化ろうかにもかかわっている可能性かのうせいがあるとみています。将来しょうらい、元気げんきなまま長生ながいきするための方法ほうほうを考かんがえるヒントになるかもしれません。

飼かい主ぬしにできること

日本にほんでも、ゴールデン・レトリーバーなどの大型犬おおがたけんを家族かぞくにむかえる人ひとはたくさんいます。今回こんかいの研究けんきゅうは、すぐに犬いぬの寿命じゅみょうをのばす方法ほうほうを示しめすものではありません。犬いぬの年ねんれいや体からだの大おおきさに合あわせた健康管理けんこうかんりで気きになることがあれば、かかりつけの獣医師じゅういしに相談そうだんしましょう。

ここがポイント

  • アメリカの研究けんきゅうチームが894頭とうの飼かい犬いぬのDNAを調しらべ、2026年ねん10月がつ8日にちに発表はっぴょうした
  • 大おおきな犬いぬほど、年としをとるにつれてDNAの「目めじるし」が早はやくへっていた
  • 超大型ちょうおおがた犬けんでは「とびはねる遺伝子いでんし」をおさえる目めじるしが、小型こがた犬けんより1年ねんあたり約やく35%多おおくへっていた
  • 原因げんいんなのか結果けっかなのかはまだ分わからず、これからの研究けんきゅうが待またれる

出典: ASU News「Why big dogs age faster」(2026年10月8日)、Smithsonian Magazine(2026年10月16日)、Wikipedia「Dog Aging Project」