写真はイメージです(Photo: Vladyslav Tobolenko / Unsplash)
猫と飼い主の体の中で、「絆のホルモン」とよばれるオキシトシンの量がいっしょに上がったり下がったりしているらしいことが、京都大学と麻布大学のチームの研究で分かりました。猫と近くで過ごしている飼い主ほど、元気な気持ちでいることも見えてきました。
どんな研究?
研究をしたのは、京都大学の高木佐保特定助教と、麻布大学獣医学部の菊水健史教授らのチームです。結果は2026年10月14日(アメリカ東部時間)に、科学の専門誌「iScience(アイサイエンス)」のインターネット版にのりました。京都大学は10月15日に、この研究をくわしく紹介しています。
チームが調べたのは、29匹の猫と、その飼い主19人です。ひとりで何匹か飼っている家もあるため、猫の数のほうが多くなっています。このうち、おしっこのサンプルがきちんと集まった24匹の猫について、データを分析しました。
おしっこでホルモンを1か月はかる
ホルモンとは、体の中でつくられて、気分や体の調子を整えるはたらきをする物質のことです。今回は、2つのホルモンに注目しました。1つは、仲よくしたり、ふれあったりするときに関わるとされる「オキシトシン」。もう1つは、ストレスを感じたときに増えることで知られる「コルチゾール」です。
チームは1か月にわたって、猫と飼い主の両方のおしっこを集め、その中にふくまれる2つのホルモンの量をはかりました。あわせて、飼い主がその日どんな気分だったかや、家の中で猫と飼い主がどれくらい近くにいたかも記録して、ホルモンとの関係を調べました。おしっこを使う方法なら、猫に注射をしたりせずに調べられるのも良いところです。
分かったこと
まず、飼い主のオキシトシンが多いときほど、猫のオキシトシンも多いという関係が見つかりました。反対に、飼い主のコルチゾールが多い、つまりストレスが高そうなときほど、猫のオキシトシンは少なくなっていました。いっぽうで、飼い主と猫のコルチゾールどうしには、はっきりした関係は見られませんでした。
さらに、オキシトシンが多い猫の飼い主ほど、落ちこんだりイライラしたりする気分が少ないことも分かりました。また、ふだん猫と近くで過ごしている飼い主ほど、元気でいきいきとした気持ちでいることも分かりました。
研究チームは、猫と人の体のつながりは、ストレスのホルモンよりも、絆のホルモンであるオキシトシンが中心になっているのではないかと考えています。おもしろいのは、飼い主の気分を一番よくあらわしていたのが、飼い主自身のオキシトシンではなく、猫のオキシトシンだったことです。猫は一日の多くを家の中で過ごすので、猫の体の状態に飼い主との関係がよくあらわれるのかもしれない、とチームはみています。
豆知識:オキシトシンと犬の研究
オキシトシンは、脳の中にある「視床下部」という場所でつくられます。もともとは、赤ちゃんを産むときやお乳をあげるときにはたらくホルモンとして研究されてきました。その後、親子の結びつきや、人を信じる気持ちにも関わることが分かり、「絆のホルモン」とよばれるようになりました。
麻布大学のチームは、以前にも犬と飼い主の研究で注目を集めました。犬と飼い主が見つめ合ったあと、両方のおしっこのオキシトシンが増えることを、世界で初めて示したのです。今回の研究は、犬よりも「気まま」と言われることの多い猫でも、人とのあいだにホルモンのつながりがあることを示した点で大切です。
これからどうなる?
ただし、今回分かったのは、2つのことが「いっしょに動いている」という関係までです。飼い主の気分が猫のホルモンを変えているのか、猫のホルモンが飼い主の気分に関わっているのか、どちらが原因なのかはまだ分かっていません。チームは今後、猫と人がふだんの暮らしの中でどのようにえいきょうし合っているのかを、さらにくわしく調べていく予定です。
猫と暮らしている人は、猫がそばに来たときに、そっとなでたり、声をかけたりする時間を大切にしてみてもいいかもしれません。ただし、猫には一人で静かに過ごしたい時間もあります。いやがるときは無理にさわらず、猫のペースに合わせることが大切です。猫の元気がない、食べないなど体調で気になることがあるときは、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
ここがポイント
- 京都大学と麻布大学のチームが、猫24匹と飼い主のおしっこを1か月調べた
- 飼い主のオキシトシンが多いほど、猫のオキシトシンも多かった
- 猫と近くで過ごす飼い主ほど、元気な気持ちでいた
- どちらが原因かはまだ分からず、これからさらに研究が進む
出典: 京都大学「ネコと飼い主、オキシトシン濃度が相関」(2026年10月15日)、iScience 論文「Cats and humans show correlated affiliative physiological states」(2026年10月14日)、菊水健史「オキシトシンと人と犬の絆」
