写真はイメージです(Photo: Danielle Barnes / Unsplash)
和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで、絶滅危惧種のキタイワトビペンギンの赤ちゃん3羽が10月に生まれました。このうち1羽は、人工授精で生まれた可能性があり、たしかめられれば、この種類では世界で初めての例になるかもしれません。答えが分かるのは12月ごろの予定です。
10月25日から28日にかけて3羽が誕生
赤ちゃんは、10月25日に1羽目、27日に2羽目、28日に3羽目がかえりました。1羽目と2羽目の親は「R003」と「R006」の番号でよばれるペアです。3羽目の親は「R041」と「R045」のペアで、人工授精の可能性があるのはこの3羽目です。
計量記念日の11月1日の朝には、体重測定の結果も発表されました。1羽目は57.8g、2羽目は81.8g、3羽目は57.9gでした。1羽目は3羽のなかでいちばん小さいものの元気に鳴いていて、2羽目は両目が開き、3羽目は力強く鳴いてえさをほしがっているそうです。
人工授精に6回挑戦 DNAで答え合わせ
人工授精とは、人の手でオスの精子をメスの体に入れて、赤ちゃんができるのを助ける方法です。園では今回の繁殖の時期に、R041とR045のペアに合わせて6回おこないました。その結果、受精した卵は園全体で3個確認され、処置をした時期から考えて、そのうちの1個が人工授精による卵かもしれないと見ています。
ただし、このペアが自然に交尾をした可能性ものこっています。そこで、生まれて1か月ほどたったころにDNA鑑定をして、父親がだれなのかを調べます。DNAは体の設計図のようなもので、親子かどうかを調べる手がかりになります。結果の発表は12月ごろの予定です。なお「世界初」は、2026年10月の時点で園が調べた範囲での話で、まだ確定したものではありません。
卵のなかから殻を割る様子も生中継
10月26日の朝には、ひなが卵の内側からくちばしで殻をつつき始める「嘴打ち」が確認されました。園は10月27日から公式YouTubeチャンネルで、24時間のライブ配信を順に始めました。生まれる場面を同時に見ていた人は、いちばん多いときで1万9千人をこえたそうです。
赤ちゃんは今、体温を保つための箱である保育器のなかで、担当の人に育てられています。10月30日からは、やわらかい流動食も食べ始めました。視聴者がチャット欄に書いた観察の内容をもとに「飼育日報」を作り、特設サイトで公開するという、みんなで参加できる取り組みも始まっています。
キタイワトビペンギンはどんな鳥?
キタイワトビペンギンは、体長55〜65cm、体重3.5〜4kgほどの小さめのペンギンです。目の上から頭の後ろへのびる、あざやかな黄色の飾り羽が目印で、岩場を両足でぴょんぴょんはねて移動します。「岩飛び」という名前も、その姿にぴったりです。魚やイカ、オキアミなどを食べ、園ではシシャモやイワシをあたえています。
オーストラリア南極局によると、インド洋と南大西洋の7つの島や島々で子育てをしています。卵は大きさのちがう2個を産み、オスとメスが交代で32〜34日ほどあたためます。ひなは、かえってから10週間ほどで海に出られるようになります。
この40年で6割近く減ったペンギン
同じくオーストラリア南極局によると、繁殖するペアの数は約24万組と見積もられていますが、この40年ほどで60%近く減ったとされます。ただ、すんでいる島がとても遠く、減っている原因はまだよく分かっていません。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、絶滅のおそれが高い「危機(EN)」に分類されています。
もし人工授精が成功していれば、動物園や水族館でこのペンギンを守り、増やしていくための新しい手がかりになると期待されます。
見に行けるのは11月上旬ごろまで
赤ちゃんは10月30日から、園内の「ペンギンベース」1階で公開されています。時間は午前10時から午後5時までで、公開は約1週間の限定です。健康を優先するため、内容や時間は予告なく変わったり休みになったりすることがあります。お出かけの前に公式サイトをたしかめましょう。
11月中旬には親鳥のもとへもどり、ペンギンベース2階の見られない場所で育てられる予定です。遠くに住んでいる人も、親元にもどるまではYouTubeの配信で様子を見ることができます。
ここがポイント
- 絶滅危惧種のキタイワトビペンギンの赤ちゃん3羽が、10月25〜28日に誕生した
- 3羽目は人工授精で生まれた可能性があり、12月ごろのDNA鑑定で判定される
- 公開は10月30日から約1週間の限定で、YouTubeでも24時間配信している
- 11月中旬には親鳥のもとにもどり、見られない場所で育つ予定
出典: アドベンチャーワールド「今朝の体重測定レポート」(2026年11月1日)、アドベンチャーワールド「赤ちゃんの一般公開がスタート」(2026年10月)、アドベンチャーワールド プレスリリース(2026年10月27日)、オーストラリア南極局 Northern rockhopper penguin(2026年11月2日閲覧)
