ニュージーランドの南の海で子育てをする「シュレーターペンギン」を、オタゴ大学などの研究チームがドローンを使って、初めて種全体で数えました。その結果、数が25年以上ほとんど変わらない島と、30年で4割以上も減った島があると分かりました。
どんな調査だったの?
研究の中心になったのは、ニュージーランドのオタゴ大学の研究者たちによる「タワキ・プロジェクト」のトーマス・マッテルン博士です。ペンギンの保護に取り組む団体「アンタークティック・リサーチ・トラスト」や「グローバル・ペンギン・ソサエティ」と協力しました。結果は科学雑誌「PLOS ONE」に発表され、大学は2026年10月22日にこのことを知らせました。
シュレーターペンギンが子育てをするのは、ニュージーランドの南島から南東へ約800kmはなれた、バウンティ諸島とアンティポディーズ諸島の2か所だけです。2つの島のグループは、おたがいに約200kmはなれています。チームは2022年から2024年にかけて、ドローン(遠くから操作して飛ばす小さな無人の飛行機)で空から写真をとり、すべての繁殖地(子育てをする集団)のペンギンを数えました。
ニュージーランドの公共放送の記事によると、バウンティ諸島ではマッテルン博士たちが2台のドローンを44回飛ばし、8145枚の写真をとって島全体の地図をつくりました。
小さな島に、大きな島と同じくらいのペンギン
調べてみると、意外なことが分かりました。バウンティ諸島は全部合わせても50ヘクタール(東京ドームおよそ11個分)しかありません。それなのに、そこで子育てをするつがい(オスとメスのペア)は約2万7800組もいました。アンティポディーズ諸島は約2万9800組で、ほぼ同じくらいです。アンティポディーズ諸島はバウンティ諸島の40倍も広く、これまではこのペンギンの一番大事なすみかだと考えられていました。
正反対の道を進む2つのグループ
1990年代半ばからの記録とくらべると、バウンティ諸島の数は少なくとも25年間、ほとんど変わっていませんでした。一方、アンティポディーズ諸島では、1995年から4割以上も減っていました。
理由はいくつか考えられています。1つ目は、ペンギンの卵やひなをねらう鳥、オオトウゾクカモメのなかま(スクア)です。ペンギンの群れが大きいときは、みんなで卵やひなを守れます。しかし群れが小さくなると守る力が弱まり、さらにねらわれて群れがばらばらになる、という悪い流れが起きたと考えられています。
同じ島にいたイワトビペンギンのなかまが20世紀の後半に大きく減り、今は1000組足らずになったことも関係しているかもしれません。共著者のクレメンス・ピュッツ博士は、その分スクアがシュレーターペンギンの卵やひなをねらうようになった可能性を挙げています。さらに、強い嵐による土砂くずれも繁殖地をこわしています。
子育てが終わった後の行き先もちがいます。アンティポディーズ諸島のペンギンは、1000km以上もはなれた南極近くの冷たい海まで旅をします。バウンティ諸島のペンギンは、島から約300km以内の、えさが豊富かもしれない海にとどまります。
「シュレーディンガーのペンギン」ってどういう意味?
研究チームはこの状況を「シュレーディンガーのペンギン」とよんでいます。もとになったのは、箱を開けて中の猫を確かめるまで、猫の様子が決まらないという物理学の有名なたとえ話です。ペンギンの場合は、遠くから見ていたときは「種全体で答えは1つ」と思われていたのに、実際に箱を開けるように調べてみると、「安定」と「減少」の2つの答えがあった、という意味がこめられています。
シュレーターペンギンは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「絶滅危惧(EN)」とされている4種のペンギンの1つです。ただ、この評価は1970年代の多すぎる見積もりにもとづいています。2つの島を平均して評価し直すと、ひとつ軽い「危急(VU)」になるかもしれません。そうなると、アンティポディーズ諸島での減少や、バウンティ諸島が漁業の影響を受けやすいことが見えにくくなる、と博士たちは心配しています。そのため、島ごとに分けて評価し、バウンティ諸島をしっかり守るべきだと伝えています。
豆知識:シュレーターペンギンってどんな鳥?
体長は約65cm、体重は約4kgです。背中や顔、のどは黒く、おなかは白。目の上から黄色い羽の「まゆ」がぴんと立ち上がっているのが特徴で、英語では「冠羽が立ったペンギン」という意味の名前でよばれています。食べ物は小さなエビのなかまやイカです。
9月に島へもどってきて、10月の上旬から中旬に卵を産みます。卵はふつう2個で、2個目のほうが1個目よりずっと大きいという、変わった特徴があります。ひなは11月中ごろにかえり、1月下旬から2月上旬に島を出ていきます。ちょうど今、島では子育てが始まっているころです。ニュージーランドだけで子育てをする鳥で、日本で見る機会はほとんどありませんが、同じなかまのイワトビペンギンは日本の水族館でも見ることができます。
ここがポイント
- オタゴ大学などが、ドローンでシュレーターペンギンを初めて種全体で数えた
- バウンティ諸島は約2万7800組で25年以上安定、アンティポディーズ諸島は約2万9800組で1995年から4割以上減った
- 天敵の鳥や強い嵐、子育て後の行き先のちがいが影響していると考えられている
- 研究チームは、島ごとに分けて守り方を考えるべきだと提案している
出典: University of Otago「Schrödinger’s Penguin: one species, two contrasting outcomes」(2026年10月22日)、BBC Wildlife(Discover Wildlife)(2026年10月31日)、RNZ「A tale of two islands – erect-crested penguins」、New Zealand Birds Online「Erect-crested penguin」