写真はイメージです(Photo: Victor G / Unsplash)
「ブーバ」と「キキ」。この2つの言葉を聞いて、丸い形ととがった形のどちらを思いうかべますか。多くの人は「ブーバ」を丸い形、「キキ」をとがった形に結びつけます。イタリアのパルマ大学の研究チームが、犬にも同じような結びつけ方が見られたとする研究を発表しました。
どんな研究が発表されたの?
この研究は、イギリスの王立協会が出している学術雑誌「Proceedings of the Royal Society B」に発表され、2026年10月中旬に科学ニュースサイトで紹介されました。中心となったのは、動物の行動を研究するエレオノーラ・ビッフィさんたち、パルマ大学のチームです。
実験に参加したのは、人といっしょに暮らす大人の犬70頭です。最初の実験に51頭、次の実験に別の19頭が参加しました。犬の種類については、紹介記事にはくわしく書かれていません。
実験はどうやって行われたの?
犬は、左右に画面とスピーカーが1つずつある部屋に入ります。飼い主は部屋のまん中で、正面を向いてすわります。片方の画面には丸い黒い形、もう片方にはとがった黒い形が映り、スピーカーからは人の声で「ブーバ」か「キキ」が聞こえてきます。形の位置と言葉の組み合わせを入れかえながら、実験をくり返しました。
1回の試験では、30秒のあいだに言葉が15回流れます。はじめの20秒は飼い主が犬をそっと押さえ、そのあいだに犬がどちらを見ているかをカメラで記録しました。顔の向きは人工知能(AI)を使って調べています。最後の10秒は犬を自由にさせて、どちらの形に近づくかを見ました。
結果はどうだった?
「ブーバ」が聞こえたとき、犬は丸い形のほうをよく見ていました。反対に「キキ」が聞こえたときは、とがった形を見たり、そちらへ近づいて調べたりすることが多かったそうです。人と同じように、音のひびきと形を結びつけている可能性があります。
ただし、ここで心配になるのが「飼い主が知らないうちに犬に合図を送っていたのでは?」という点です。そこで2回目の実験では、飼い主がヘッドホンで大きな音のロック音楽を聞き、言葉が聞こえないようにしました。それでも、犬の反応は1回目と同じような結果になりました。
1回目の実験では、犬は全体としてとがった形を見ることが多かったのですが、2回目ではこのかたよりが消えました。研究チームは、昔の犬やオオカミの顔は角ばった形をしていることが、とがった形に目が向く理由に関係しているかもしれない、と考えています。
豆知識:「ブーバ・キキ効果」ってなに?
意味のない言葉と形を、多くの人が同じように結びつける現象は「ブーバ・キキ効果」とよばれます。1920年代にジョージアの心理学者ウズナゼが最初に気づき、ドイツの心理学者ケーラーが1929年の本で「タケテ」と「マルマ」という言葉を使って紹介しました。2001年の研究では、95%の人が丸い形を「ブーバ」、とがった形を「キキ」と答えています。
この効果は、2歳半の子どもや生後4か月の赤ちゃんにも見られたという報告があります。2022年には25の言語を話す917人を調べた研究があり、言葉や文字がちがっても、多くの人で同じ傾向が見られました。動物では、イタリアのパドヴァ大学の研究で、生まれて間もないヒヨコにも見られたと報告されています。日本語でも、「ふわふわ」「とげとげ」のように、音のひびきから形や手ざわりを思いうかべる言葉がたくさんありますね。
なぜ大事なの? これからは?
犬は長い時間をかけて人と暮らしてきた動物で、人の言葉や声の調子によく反応します。もし犬も音と形を結びつけているなら、犬が人の言葉を覚えやすい理由や、人と犬が仲良くなってきた歴史を考えるヒントになるかもしれません。
一方で、紹介記事では、犬が本当に音と形を結びつけていると言い切るには、さらに研究が必要だとされています。犬に話しかけるときは、言葉の意味だけでなく、声のひびきや調子も伝わっているかもしれない、と考えてみるのもおもしろそうです。
ここがポイント
- イタリアのパルマ大学の研究で、犬70頭が「ブーバ」「キキ」という言葉と形の組み合わせに反応した
- 「ブーバ」では丸い形、「キキ」ではとがった形をよく見る傾向があった
- 飼い主にロック音楽を聞かせて合図を防いでも、同じような結果になった
- 人やヒヨコで知られる「ブーバ・キキ効果」が、犬でも見られる可能性がある
出典: ScienceAlert(2026年10月14日)、IFLScience(2026年10月15日)、Wikipedia「Bouba/kiki effect」
