札幌市円山動物園で、北海道にすむトガリネズミのなかま4種類が、すべて見られるようになりました。体重がわずか数グラムという、とても小さな哺乳類です。動物園によると、4種類をいっしょに見られるのは日本でここだけだそうです。
4種類そろった「ドサンコの森」
円山動物園は2026年10月22日、こども動物園の中にある「ドサンコの森」のトガリネズミ展示場を広げ、北海道にいる4種類すべての展示を始めたと発表しました。住所は札幌市中央区宮ケ丘です。
この展示場では2024年からトガリネズミを見せてきましたが、これまでは一部の種類だけでした。今回スペースを広げたことで、大きさや暮らし方のちがう4種類を、となり合わせでくらべられるようになりました。
ただし、とても小さくデリケートな動物なので、体調や気温によっては、その日に見られない種類が出ることもあります。タイミングが合えば4種類を見くらべられる、と動物園は案内しています。
1円玉より軽い? 4種類のちがい
展示されている4種類と、だいたいの体重は次のとおりです。いちばん小さいチビトガリネズミは約1.5〜3グラムで、世界でもっとも小さい哺乳類の一つです。1円玉は1枚1グラムなので、硬貨2〜3枚分ほどの重さしかありません。北海道にすむのは「トウキョウトガリネズミ」という亜種(同じ種類の中の地域ごとのグループ)で、環境省のレッドリストで絶滅のおそれがある種類とされています。
ヒメトガリネズミは約1.5〜5グラムで、ほかの種類より数が少ないと考えられています。バイカルトガリネズミは約3.5〜12グラムで、北海道にいるのはエゾトガリネズミという亜種です。いちばん大きいオオアシトガリネズミでも約6〜20グラムで、大きな前足と長いつめで土をほり、地面の下に近いところで暮らしています。
体の大きさだけでなく、すんでいる場所や使う空間も種類ごとにちがうそうです。展示では、そうしたちがいにも注目できます。
研究から生まれた展示
この展示のうしろには、長く続く研究があります。円山動物園は2021年度から、北海道大学低温科学研究所、東海大学生物学部、野生生物生息域外保全センターといっしょに、トガリネズミの研究を進めてきました。飼い方の工夫、赤ちゃんを生ませるための技術、行動や体のしくみを調べることが目的です。
その成果の一つが、ヒメトガリネズミの繁殖です。研究チームは、北海道の根室市でつかまえた個体と、動物園で生まれた個体を使って、オスとメスを出会わせる実験をくり返しました。ビデオで行動を記録し、ふれあい方や回数を細かく数えました。
その結果、3回の妊娠・出産に成功しました。妊娠の期間は25〜29日で、生まれたときの赤ちゃんは約0.3グラムしかありませんでした。それが約20日で3.5グラムほどになり、10倍以上に育ちました。生後25〜30日ごろには、おっぱいを飲まなくなる「離乳」をむかえます。北海道大学はこの成果を2026年5月に「世界初」として発表し、論文は学術誌「Mammal Study」に載りました。
豆知識:ネズミではなくモグラのなかま
トガリネズミは名前に「ネズミ」とつきますが、実はモグラに近いなかまです。口の先が細くとがっていて、目はとても小さく、歯の先が赤っぽい色をしているのが特徴です。
食べ物は、昆虫やクモ、ミミズなどの小さな生き物です。体が小さいため、エネルギーをたくさん使い、昼も夜も活動します。1〜2時間ごとに休んだり動いたりをくり返すとされています。寿命は短く、ふつうは1年たたないうちに一生を終え、長くても16か月ほどといわれます。
森や草原の落ち葉の下などで暮らしているので、野生で姿を見ることはほとんどありません。そのため、繁殖や行動など、まだ分かっていないことが多い動物です。
これからに期待されること
ヒメトガリネズミの繁殖がうまくいったことで、さらに小さくて数が減っているチビトガリネズミを、動物園で増やすための手がかりになると期待されています。生き物を守るには、野生のすみかを守ることと、動物園などで命をつなぐことの両方が大切です。
円山動物園では、トガリネズミの研究について話すイベントも開いてきました。展示を見に行くときは、体がとても小さくすばやく動くので、ガラスの前でじっくり待ってみるのがおすすめです。見られる種類はその日の体調などで変わるため、出かける前に動物園の案内を確かめると安心です。
ここがポイント
- 円山動物園で、北海道にすむトガリネズミ4種類がすべて見られるようになった
- いちばん小さいチビトガリネズミは約1.5〜3グラムで、世界最小級の哺乳類
- 共同研究で、ヒメトガリネズミの飼育下での繁殖に成功し、論文になった
- 名前はネズミでも、本当はモグラに近いなかま
出典: 札幌市円山動物園(トガリネズミ類4種の展示のお知らせ)(2026年10月22日)、北海道大学プレスリリース「世界初:ヒメトガリネズミの飼育下繁殖に成功」(2026年5月27日)、札幌市円山動物園「トガリネズミに関する調査及び研究について」、コトバンク「トガリネズミ」(日本大百科全書ほか)