中国の香港の町なかで、絶滅のおそれがとても高いオウムの仲間「コバタン」のために、人工の巣箱を取りつける取り組みが進んでいます。2025年3月から15個の巣箱がつけられ、そのうち4個でつがいが暮らし始めました。
香港の町で暮らす約200羽のコバタン
コバタンは、白い体に、あざやかな黄色の冠羽(頭の上に立つかざりの羽)を持つオウムの仲間です。もともとはインドネシアの東部や東ティモールの森などにすむ鳥ですが、ふるさとで生き残っているのは2,000羽にも満たないとされています。
ところが香港には、野生で暮らすコバタンがおよそ200羽もいます。世界の野生のコバタンの約1割にあたり、インドネシアと東ティモールのほかでは最も大きな集団です。香港のコバタンは、もとはペットとして飼われていた鳥が逃げたり、放されたりして増えたと考えられています。天敵が少なく、法律でしっかり守られているため、数は安定しています。
木の穴が減る「住宅難」
コバタンは、木にあいた穴(樹洞)に巣をつくって子育てをします。しかし香港では、台風で木がたおれたり、町の木が切りそろえられたりして、知られていた15か所の巣の木がすべて失われました。香港大学の研究者アストリッド・アンダーソンさんは、木の穴の6割以上がなくなったと見ています。アンダーソンさんはこの状態を、鳥たちの「住宅難」と表現しています。
そこで、アンダーソンさんと、木の専門家で自然保護に取り組むハリー・ウォンさんが「HK Cockatoo Watch」という活動を始めました。
カメラ付きの巣箱で子育てを見守る
巣箱は、オーストラリアで使われている形を参考に、香港の湿気の多い気候に合うようにつくりかえたものです。塩化ビニールの筒でできていて、中にはカメラがあり、携帯電話の電波を使って、はなれた場所からでも子育ての様子を確かめられます。
巣箱は2025年3月から、香港島の香港大学のキャンパスや学校、香港公園などの公園に、あわせて15個取りつけられました。そのうち4個で、つがいが巣として使っています。ある学校では、2026年5月に美術室の外の木の巣箱にペアが入り、今もすみ続けています。
2026年5月には、マンションのエアコンの通気口で生まれたひなが見つかり、元の巣の近くの巣箱にうつされました。親鳥はおよそ7時間後にひなを見つけて世話を続け、ひなは無事に巣立ちました。
これからの課題と期待
ただ、鳥が巣箱で休んでも卵を産まないこともあります。ウォンさんは、巣箱の中が暑くなりすぎることが原因ではないかと考え、温度を下げる工夫を続けています。鳥は新しい巣箱に慣れるまで時間がかかり、ひとつの季節に下見をして、次の季節に子育てをすることもあるそうです。2026年10月中には、少なくとも3個の巣箱を追加する計画でした。
また、アンダーソンさんたちの2026年の遺伝子の調査で、香港のコバタンは遺伝子の多様性(一羽一羽の遺伝子のちがいの豊かさ)が思っていたより高いことが分かりました。香港の鳥を守ることが、ふるさとのインドネシアでコバタンを増やす助けになるかもしれないと期待されています。
豆知識:コバタンってどんな鳥?
コバタンの全長は約33cm、体重は約310〜380gです。種子や木の実、果物、花、葉の芽などを食べます。寿命は40〜60年ともいわれる、長生きの鳥です。ふるさとでは、ペットとして売るためにたくさんつかまえられたことで数が大きく減りました。今は、国際的な取引をきびしく制限するワシントン条約の「附属書I」に入っています。
日本でもオウムの仲間はペットとして飼われています。長生きなので、最後まで世話ができるかをよく考えてから迎え、決して逃がしたり放したりしないことが大切です。
ここがポイント
- 香港には野生のコバタンが約200羽いて、世界の野生の約1割にあたる
- 巣をつくる木の穴が減り、2025年3月から人工の巣箱15個が取りつけられた
- 15個のうち4個でつがいが暮らし、ひなが巣立った例もある
- 香港の鳥の遺伝子の豊かさが、ふるさとでの保護に役立つと期待されている
出典: Mongabay「Artificial nests give Hong Kong’s cockatoos a home」(2026年10月6日)、Mongabay「Artificial nests help Hong Kong’s rare cockatoos cope with a ‘housing crisis’」(2026年10月28日)、World Parrot Trust「Yellow-crested Cockatoo」