写真はイメージです(Photo: Simone Dalmeri / Unsplash)
オーストリアのインスブルック大学の研究チームが、犬をなでることと人のストレスの関係を調べました。休けい時間に自分の犬にふれた飼い主は、そのあともう一度ストレスを受けたとき、心臓や脳の反応がおだやかだったといいます。研究は心理学の学術誌「Biological Psychology」に発表されました。
だれが、どんな人を調べたの?
研究したのは、インスブルック大学心理学部のヴァネッサ・カウフマンさんやアネット・シルマーさんらのチームです。2歳以上の健康な犬を飼っている66人が、自分の犬といっしょに実験に参加しました。とちゅうでやめた人などをのぞき、64人(女性51人・男性13人、平均34歳)の結果を分析しました。
参加した犬は、知らない部屋でも落ち着いていられることも条件でした。
わざと「緊張する場面」をつくる実験
参加者はまず、10分間のストレス課題にとりくみました。一般常識のクイズに5秒以内で答えたり、決められた数ずつ引き算をしながら数を数えたりします。さらに、ビデオ通話でつながったスタッフから、きびしい評価だけを伝えられました。
課題のあとは、別の部屋で5分間、犬といっしょに休みます。この流れを2回くり返しました。1回は、犬が部屋を自由に歩けて、なでたりだっこしたりできる回。もう1回は、犬を短いリードでつなぎ、手がとどかないようにした回です。ふれない回でも、犬に話しかけたり目を合わせたりはできました。
脳波と心拍で「体のストレス」をはかる
研究チームは、頭に64個のセンサーがついたキャップで脳波を、腕につけたセンサーで心臓の動きを記録しました。脳波のうち「アルファ波」はリラックスしているときに多く、「ベータ波」は頭が緊張しているときに多く出るとされます。
心臓では、心拍数(1分間に心臓が打つ回数)に加えて「心拍変動」を調べました。心拍変動とは、心臓が打つ間かくのわずかなゆらぎのことです。アメリカのハーバード大学の健康情報によると、体が休んでいるときは心拍がゆっくりになってゆらぎが大きくなり、ストレスがかかると心拍が速くなってゆらぎは小さくなります。
なでた効果は「次のストレス」にあらわれた
犬にふれてよい休けいでは、飼い主は5分のうち約64%、およそ3分12秒も犬にさわっていました。多くは毛をなでるしぐさでした。
研究チームは、犬をなでると休けい中に早くストレスから回復すると予想していました。ところが、回復のはやさは、なでた回もなでなかった回もほとんど変わりませんでした。
ちがいが出たのは、そのあとの2回目のストレス課題です。犬をなでた人は、心拍数が上がりにくく、心拍変動も保たれ、アルファ波の落ちこみも小さくなりました。「自分で状況をコントロールできている」という感覚も強かったといいます。なでることが、次のストレスにそなえる「クッション」のような役目をしたのではないか、と研究チームは考えています。
おもしろいことに、参加者が自分で答えた「気分」は、体の変化とほとんど一致しませんでした。ストレスは、本人が気づかないところでも体にあらわれるようです。
まだ分からないこともある
この結果は、研究チームが前もって立てた予想を確かめる分析ではなく、そのあとに追加した分析から見つかったものです。そのため、あらためて確かめる必要があります。また、参加者の約8割が女性で、全員がヨーロッパの白人でした。実験室での結果なので、ふだんの生活でも同じことが起きるかはまだ分かりません。
研究チームは、飼い主の気持ちと同じくらい、犬が心地よく感じているかどうかも大切だと強調しています。
犬とふれあうときに大切なこと
なでられるのが好きな場所や時間は、犬によってちがいます。犬が自分から近づいてきたときにやさしくなで、いやがって離れていくときは無理にさわらないようにしましょう。犬にとっても人にとっても安心できるふれあいが、おたがいのよい関係につながります。
ここがポイント
- オーストリアのインスブルック大学が、犬の飼い主64人とその犬で実験した
- 休けい中に犬をなでても、その場での回復のはやさは変わらなかった
- なでた人は、次のストレスで心拍や脳波の反応がおだやかだった
- 結果はこれから確かめる段階。犬の気持ちを大切にふれあうことが大事
出典: PsyPost(2026年10月20日)、ScienceAlert(2026年10月24日)、Harvard Health Publishing「What is heart rate variability?」(2021年2月1日)
