写真はイメージです(Photo: Linoleum Creative Collective / Unsplash)
犬の頭のはたらきが年を取って弱ってきたことを、大きな変化が出る前に見つけられるかもしれません。アメリカのアリゾナ大学などの研究チームが、おやつを使った3つのゲームで調べるテスト「CANID(カニッド)」を作りました。約40分のテストで、7〜8歳ごろの小さな変化も見つけられるといいます。
239頭の犬で試したテスト
この研究は、2026年10月12日に学術雑誌『アニマル・コグニション』で発表され、10月22日にアリゾナ大学が内容を紹介しました。研究の中心になったのは、同じ大学の心理学科で学ぶ大学院生のステファニー・ハーグレイブさんと、獣医学部のエバン・マクリーン教授です。
テストを受けたのは、アリゾナ州ツーソンとカリフォルニア州の飼い犬239頭です。多くの犬は半年後と1年後にも同じテストを受けました。その結果、点数は大きくぶれず、人の頭のはたらきを調べるテストと同じくらい安定していることが分かりました。
3つのゲームの中身
テストは、記憶力と、やり方を切りかえる力を調べるものです。言葉で説明できない犬でも取り組めるように、どのゲームもおやつがごほうびになっています。
- 透明な筒のゲーム:両はしが開いた透明な筒におやつを入れます。犬は筒の正面に鼻をぶつけず、横に回って開いた口から取らなければなりません。
- かくしたおやつのゲーム:4枚の木の板のどれかのうしろにおやつをかくします。最長で40秒待ったあと、ときには気が散ることもはさみながら、場所を思い出して探します。
- 回り道のゲーム:しきりを回りこんでえさのところへ行きます。研究者は片方の道をこっそりふさぎ、犬が通れる道を覚えると、ふさぐ道を入れかえます。
3つの結果は、最後にひとつの点数にまとめられます。透明な筒のゲームで求められる力は、年を取ると弱くなりやすいことが分かっているそうです。
なぜ早く見つけることが大事なの?
犬にも、人の認知症に似た「認知機能不全症候群」という状態があります。はっきりした様子が出てくるのは12〜14歳ごろです。東京都のサイトで公開されている講習会の資料では、同じ場所を歩き回る、せまいところに入って出られなくなる、夜に鳴くといった例が紹介されています。
これまでの調べ方は、飼い主がアンケートに答えるものが中心でした。しかしアンケートで分かるのは、変化が目立つようになってからです。研究チームによると、そのころには弱り方がかなり進んでいることが多いといいます。CANIDを使えば、もっと早い時期からの変化を追えると期待されています。
大きな犬と小さな犬でちがう?
犬は体の大きさによって寿命がちがいます。そこで研究チームは、大きさによって弱り方の時期もちがうのかを調べましたが、見つかった変化の道すじはひとつでした。大型犬は寿命が短いぶん、大きく弱る時期に届く前に一生を終えることが多く、チワワのような小型犬のほうが変化が表れやすいと考えられるそうです。
人の研究にもつながる?
年を取って認知症になった犬の脳には、人のアルツハイマー病で見られるものに似た「アミロイド」というかたまりができることがあります。そのため研究者たちは、犬の研究が人の病気を知る手がかりにもなると考えています。
アメリカでは、約5万頭の犬が参加する研究「ドッグ・エイジング・プロジェクト」にアリゾナ大学も加わっています。参加者には、家でできるもっとかんたんなゲームを試してもらえる場合もあるそうです。
日本の飼い主ができること
CANIDは研究のために作られたテストで、訓練を受けた人と専用の道具が必要なため、家で同じように試すことはできません。発表の中で、日本で受けられるという話も出ていません。
それでも、毎日いっしょにいる飼い主だからこそ気づける変化はあります。名前を呼んでも反応しない、トイレの失敗が増えた、夜に鳴くようになったなどの様子が見られたら、しかるのではなく「犬が困っているサイン」と受け止めることが大切だと、東京都のサイトの資料は伝えています。目や耳のおとろえや、体の痛みが関わっていることもあるので、気になるときはかかりつけの獣医師に相談しましょう。
ここがポイント
- アリゾナ大学などのチームが、おやつを使う約40分のテストCANIDを作った
- 飼い犬239頭で試し、半年後や1年後に受け直しても点数は安定していた
- はっきりした様子が出る12〜14歳より前の、7〜8歳ごろの変化をとらえられるとされる
- 家ではできないテストなので、気になる変化はかかりつけの獣医師に相談を
出典: アリゾナ大学(2026年10月22日)、EurekAlert!(2026年10月22日)、Futurity(2026年10月26日)、東京都サイト掲載「シニア期のペットケア」(令和4年度講習会資料)
