写真はイメージです(Photo: Erik Karits / Unsplash)
ドイツのボン大学の研究チームが、オーストラリアなどにすむハエトリグモのなかま「ポーシャ・フィンブリアータ」が、2つの段階に分かれた眠りをとっていることを確かめました。そのうちの1つは、人の「夢を見やすい眠り」に似た様子でした。
クモも眠る? 2つの段階を確認
ボン大学の生物学の研究所が2026年10月26日(アメリカ東部時間)に発表しました。研究の結果は、アメリカの科学雑誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」にのりました。チームのリーダーはダニエラ・レスラーさんで、8人が論文に名前を連ねています。
調べたのは、ハエトリグモのなかまの「ポーシャ・フィンブリアータ」という種類です。研究チームによると、クモがただじっとしているだけではなく、本当に眠っていることを、体の動きからしっかり確かめたのは今回が初めてだといいます。眠りは、ゆっくり休む段階と、目や体がぴくぴく動く段階の2つに分かれていました。
どうやって調べたの?
クモを1ぴきずつ、直径12cmの小さなプラスチックの入れ物に入れ、何日も昼と夜を通してくわしい動画をとりました。明るさを変えて、昼と夜のリズムが分かるようにし、夜は暗い中でもうつせる赤外線カメラを使いました。赤外線は人の目には見えない光です。
眠っているのか、ただ動かないだけなのかを見分けるため、音を聞かせて、反応するまでの時間もはかりました。眠っているときは、起きているときよりも反応がおそくなるはずだからです。さらに、眠りをじゃましたあとに、そのぶん長く眠ろうとするか(「眠りの取り返し」)も調べました。人も、ねぶそくの次の日はたくさん眠りたくなりますね。
今回は脳の働きははかっておらず、体の動きや姿勢だけから判断しています。クモは、自分で出した糸にぶら下がり、さかさまになって眠ることもありました。
人の「レム睡眠」に似た眠り
2つの段階のうちの1つは、目が動いたり、足や体がぴくっとしたりする眠りでした。人では、眠っている間に目がすばやく動く時間を「レム睡眠」といい、このとき夢を見ることが多いと考えられています。
では、クモも夢を見ているのでしょうか。研究チームは、目の動きが見られたからといって、クモが夢を見ているかどうかまでは分からないと注意しています。人と同じしくみで目が動いているとは限らないからです。
ポーシャってどんなクモ?
ポーシャ・フィンブリアータは、大人になると1ユーロ硬貨くらいの大きさになります。体の長さはメスで約0.7〜1cm、オスで約0.5〜0.65cmです。インドやスリランカ、台湾、東南アジア、ニューギニア、オーストラリア北部などの森にすんでいて、日本にはすんでいません。
このクモは、ほかのクモを食べる、めずらしい狩りの名人です。あみにかかった虫のふりをして糸をゆらし、あみを作るクモをおびき寄せることもあります。こうした作戦から、ものを覚えたり考えたりする力が高いと考えられています。前を向いた大きな目はとてもよく見え、えものや相手をしっかり見分けられます。
前の研究からつながる発見
レスラーさんは、ドイツのコンスタンツ大学にいた2022年にも、別のハエトリグモの赤ちゃん34ぴきの夜のようすを赤外線カメラで調べ、目の中のあみ膜が動く「レム睡眠のような時間」を見つけていました。この時間は1回およそ1分半で、夜がふけるにつれて長くなっていったそうです。今回の研究は、それを大人のクモで、もっと多くの方法を使って確かめたものです。
これからの研究
これまでの眠りの研究は、ほとんどが人や犬、鳥などの背骨のある動物で行われてきました。体のつくりがまったくちがうクモでも2つの段階の眠りがあるなら、眠りはとても古くから、いろいろな生きもので大切にされてきたのかもしれません。
チームは今後、いろいろな種類のクモの眠りをくらべたり、野生と研究室での眠りのちがいを調べたりする予定です。眠りと、ものを覚える力の関係や、眠っている間の脳の働きも調べたいとしています。夜の人工の明かりや、地球の気温が上がることが、虫やクモの眠りにどう関係するかも研究のテーマです。
豆知識
日本の家の中や庭でも、ハエトリグモのなかまを見かけることがあります。あみをはらずに歩き回り、ぴょんととんで小さな虫をつかまえるクモです。見つけたときは、むりにつかまえず、そっと見守ってあげましょう。
ここがポイント
- ドイツのボン大学が、ハエトリグモのなかまが2段階の眠りをとることを確かめた
- 1つは目や体がぴくっと動く、人の「レム睡眠」に似た眠り
- 夢を見ているかどうかは、まだ分かっていない
- 夜の明かりなどが眠りにどう関係するかも、これから調べる予定
出典: ボン大学(EurekAlert!)「How deeply do spiders sleep?」(2026年10月26日)、PNAS「Behavioral evidence for two-stage sleep in spiders」(2026年)、ScienceDaily(2026年10月27日)、コンスタンツ大学 年次報告「Just a dream?」(2023年)、Wikipedia英語版「Portia fimbriata」(2026年10月28日閲覧)
